英雄と6人の王【第1章】15年祭②
「ランク=アインメルト、シュナ=リーリル。2人を成人と認め、王都へ出発の許可を出す。頑張るように。」
15年祭の開幕式で、シュナの親父さん、村長のリーリルさんから出発の許可を得る。
リーリルさんは、魔族の攻撃により戦死した俺の父と母の親代わりになってくれた人だ。親を失い、独り身となった俺を育ててくれたまさに恩人である。
「リーリルさん、今日までありがとうございました。この恩は忘れません。必ず返してみせます。」
「お父さん!ランクと私は絶対死なない!この村のため、必ず貢献してくるわ!!」
俺とシュナは、リーリルさんの激励の言葉に返事をする。
「うぅ…。ランクぅ、シュナぁ…。頼むから行かないでくれよぉ…」
さっきの態度とは打って変わって、リーリルさんは泣き始める。そりゃそうだろう。明日から娘が、戦場へ赴くのだ。父親として心配なわけがない。
「大丈夫よ!お父さん!ランクと私は最強よ!!ちょっとやそっとじゃ死なないんだから!!」
「そうですよ。リーリルさん。それに、シュナのことは、俺が必ず守ります」
「ランクくん。君のことは、本当の息子として育ててきた。シュナ同様に心配なのだよ。君にも私は死んで欲しくないんだ。しっかり生きてくれ…うぅ…」
夜の風が身を震えさせるように、リーリルさんや村の人たちもみな、身体をふるわせていた。村の人たちは家族同然の仲間だ。俺とシュナの目からも自然と涙がこぼれる。
「みんな、今日は2人の門出となる祝いの日だ!存分に、盛り上がろうぞ!!」
リーリルさんが、俺やシュナ。村人たちの涙を察し、場を盛り上げる。
「うおおお!!!!」
それに続くように、村の子供たちやじいさん、ばあさんたちも涙を拭い声を上げた。
この日は、明日への門出。歌い、踊り、食い、喋る。夜遅くまで、祭りは続いた。
その夜。リーリルさんが俺に耳打ちをするように、相談があると言って「こっちだ」と手招きする。なんだろうと思い、俺は人気のない場所へと案内された。
「時にランクくん。君は息子同然に育ててきたと私は先程言ったよな」
「はい」
「ランクくんとシュナは兄妹のような関係だと私は思っている。必ず、生きて戻ってきて欲しいんだ。時に助け合い、励まし合う。そんな関係を築いてほしんだ。」
どうやら、リーリルさんの相談とは俺とシュナの事のようだ。無論当たり前である。恩人の娘であるシュナを見殺しにするはずなどあるわけもない。
「分かっています。シュナを守る。それは俺の使命です。必ずお互いに助け合い、励まし合うような冒険者になって、必ず生きて戻ってきて見せます。」
俺は、リーリルさんの目を見て語った。この言葉に嘘はない。そう訴えかけるように。
「やはり、君はすごいなランクくん。シュナからランクくんが混合魔法を使えると聞いたが、その歳でその目を出来る素晴らしい魔法使いになってくれたとは…。私も鼻が高いよ」
「いえ、俺なんてまだまだですよ」
「そんなことは無い。それに、君はシュナを守り、2人で生きて戻ってくると約束してくれた。私はそれが何より嬉しいのだよ」
リーリルさんは、涙を流しながら語った。俺にはそれが嬉しかった。誇らしかった。初めて、親代わりとなってくれた人へ、最初の親孝行ができた気がしたからだ。
その翌日、俺とシュナは早朝から出発の支度を済ませ、王都へ行く準備をした。王都へはかなりの距離があり、風魔法を付与した馬でも、半日以上はかかる。
「じゃあ、お父さん。行って来るわ!」
「リーリルさん。本当にお世話になりました。」
「うぅ…。2人のことは村から応援するからな…。頑張ってきてくれ…」
「「はい!」」
俺とシュナは簡単に挨拶を済ませると、事前に風魔法を付与した、馬に乗り、ラック村を後にした。
俺はシュナの方を見て、昨日のリーリルさんの話を思い出した。
「お前のことは必ず守るよ」
独り言のように俺は呟いた。誰にも聞こえないような、そんな声で。
「なんか言った??」
「いいや、なんでもないよ」
なんだこいつ、耳良すぎだろ…
とにかく、俺たちは今日冒険者となる。