Hachi_amumusanのブログ

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英雄と6人の王【第1章】終わり、そして始まる

「お、おい!あんた誰だ!?」
俺は、自らの感情を平常心に無理やり戻し謎の老人に問う。
「いやぁ、こんなになってたとはのぉ…はて、これをやったのは君かな?ランク=アインメルト君」
その老人は俺の言葉を無視するように自分の質問を問いかけてくる。
「い、いや、俺がやったといえばそうだが、正確にはカリオットと戦っていてこうなって…」
俺はその老人に起きたことをありのままに伝える。
「ほう、なるほどのぉ。はて、先の話にあったやられてしまった仲間とは彼らのことかな?」
その老人は俺にそう聞くとシュナたちの方向へと歩みを進め始める。
「ま、まぁそうだが…て、じいさん何やってんだ!?」
その老人はシュナの前でかがみ込み、額に手を当てて、魔法の詠唱を始める。
「力の源である“魔法王”が命ずる。全てに調和をもたらし、世界の均衡を護りし癒しの精よ、魔法王の名において全てのものを癒せ」
「治癒魔法『木枝(ブランチ)の恩恵(キュア)』」
すると、シュナの体から木々の枝のように緑色の魔力が溢れ出し、俺を含めた仲間の傷が一瞬のうちに癒えていく。
「こ、これは魔法王が使うとされる癒しの魔法!?でもなんでじいさんがこんな魔法を…」
するとじいさんは俺の言葉に反応しニコッとしながらこちらを振り返る。
「おー、まだ自己紹介してなかったのぉ。わしは“テスカト=タナトール”というものじゃよ。地元では名が知れ渡ってるとは思うのじゃが…」
「テ、テスカトってそりゃ、魔法王の名前!じゃああんたが!?」
「その通りじゃ。」
そのじいさんは、自慢げに自分が魔法王本人であることを認める。
「ところでじいさん…いや、魔法王様!一体何をしたんだ!?」
「ほっほっほ!じいさんでいいぞい。癒しの魔法で傷は治した。しかし、能力による傷までは治すことはできないから、そこは許して欲しい…」
「そ、そうだ!能力ってのは一体…」
すると、魔法王のじいさんは能力について語り始める。
「この世には様々な魔法があるが、その魔法をある程度まで習得し、熟練したものに現れるいわば副産物みたいなものじゃ。」
そして、じいさんはカリオットの能力にも解説を加える。
「アイツは…カリオットの能力はたしか『呪言(カース)』じゃ。」
「呪言(カース)…!?おい、それは一体なんなんだ!!」
じいさんの話によると、どうやら呪言(カース)とは、自らの魔力を拘束力に変えて、相手を言葉のままに操る能力らしい。そして、シュナたちはその影響に晒されて未だに拘束を受けているらしい。
しかも、この能力は命令をされて、それを遂行した瞬間に切れるらしいが、カリオットからは命令をされなかったので、このままだと言う。
「じゃあ一体どうすれば!」
「とりあえずわしの城へ来い。こうなったのもわしの責任じゃしな。さ、魔法陣を作った。これに全員入れるんじゃ。」
そして、俺はシュナたちを魔法陣の中に置いて、俺もその中へと入る。
「さて行くかのぉ。『空間転移術式(キャリーウェイ)』発動!!」
すると、辺りは一瞬で荒野から豪華絢爛という言葉がピッタリと合う、そんな場所に移動した。
「ここは一体…」
《王座の間って言ったら分かるかな?ランク》
(お前、この場所知ってんのか?)
俺は心の中の竜王に直接話しかける。
《お、やっと声に出さなくても僕と会話できることに気づいたんだね!》
(茶化すな。で、ここはどこなんだ?)
すると竜王は「おっと失礼」といって話を続ける。
《恐らく覇王がいた城を魔法王の城として改装したんだろうね。香りとかは違うけど、何となく構造とかが一緒だ》
「なるほど、もと覇王の城ってことか…」
「ん?何か言ったかい?ランクくん」
じいさんから疑問の言葉が飛んでくる。
どうやら、つい癖で声に出てしまっていたようだ。
「あ、いやなんも言ってない!それより、じいさん。シュナたちはどうやったら治るんだ!?」
俺は話題の転換も兼ねて、シュナたちのことを聞いた。
「能力には能力しか効かない。だから、呪いの解除系能力を使えるやつを探すことじゃが、これほどの能力じゃ…恐らくそんなやつにはなかなか会えないじゃろう」
「そんなに難しいのか…」
俺の深刻そうな顔を見て、じいさんはもう1つの解決方法を提案してくる。
「あとは1つ。カリオットを倒すことじゃな。」
「カリオットを?」
俺はその言葉の真意を知るために質問を聞き返す。
すると、じいさんはそれについての解説を始めた。
「能力の解除法には能力を用いるしかないと話したが、その他にも使用者を殺すという手段があるんじゃ。そうすれば自動的に解除されるはずじゃよ。」
(おい竜王、それはほんとか?)
《本当さ。嘘はついてないと思うよ。能力には基本的に死後にも永続的に続くものは存在しないはずだからね。》
俺は竜王に確認をとって、それが真実であることを確認すると、具体的にどうすれば良いか質問をした。
「じいさん。具体的にどうすればカリオットには出会える?」
すると、じいさんは「簡単じゃ」と言い、説明を始める。
「魔王軍には、下級魔族の悪魔や不死者(アンデット)を従える10柱。その上に4人の幹部。さらに上には魔王が存在しているんじゃ。ちなみに、幹部は“4人の英雄”に倒される前は、元々5人じゃった。」
「そ、そう言えば、カリオットが『我は魔王軍の幹部にして10柱が1人。』みたいなことを言ってた気がする…!」
「なるほど!わしがこの前腹いせに10柱の一体をぶちのめしたから、やつが幹部と共に兼任しているのじゃな。ほっほっほ!」
じいさんは嘘みたいなことを笑いながら話す。いや、10柱の魔族を腹いせに倒すとか笑い事じゃないんだが…
そしてじいさんはあとに続ける。
「幹部は基本的に魔王城にいるとされてる。だから、冒険をしていれば会えるんじゃ。そして、その内のやつは第3位の幹部のはずじゃ。」
じいさんの話によると、4人の幹部には順位と2つ名が付与されているとの事だ。
幹部第1位『不死(アンデット)王(キング)』
幹部第2位『悪魔(デーモン)将軍(ジェネラル)』
幹部第3位『呪術皇(カースエンペラー)』
幹部第4位『変幻者(シークレットモンスター)』
俺が狙うべきは、第3位『呪術皇(カースエンペラー)』カリオットである。
「君の前に現れたカリオットは恐らくその分身じゃろうな。やつは、自分の4分の1の力を持つ分身を作り出すことが出来る。」
「分身…?でも、やつは転移石を使ったぞ!なら本物じゃないのか?」
「恐らくは情報収集も兼ねていたのじゃろう。分身は死ねば記憶がなくなるが、本体と一体化すれば記憶は共有されるのじゃ。おそらく君という新たな脅威を記憶するためにな。」
そしてじいさんは、もう1つの今回の問題を俺に切り出す。
「あと、今回のカリオットの引き起こした事件じゃが、組合長ならびに全ギルド長。そして職員までもが洗脳され生き残ったのは、君たちSランク組と試験に参加出来なかったEランク組だけなのじゃ。現在洗脳を解いて、組合長たちから事情を聴取しているのじゃが、どうやら何も覚えていないらしくてな。」
「そ、そんな…じゃあカリオットのことは俺しか知らないってことか…」
「そういうことになる。しかし、君には色々話してもらえて、今回の主犯がカリオットということを聞くことが出来た…ありがとうランクくん」
そうお礼を言うと、カステルが深く頭を下げる。
「じいさん!王様がそうな簡単に頭下げちゃいけねぇよ!!」
「いや、今回の件はわしの不覚じゃ。謝らしてくれ!そのお詫びと言ってはなんだが、ランクくん。わしの元で修行をせんか?」
「え?修行!?俺が、あんたの元で!?」
俺は驚きのあまり、聞き返してしまう。
「その通りじゃ!君は遅かれ早かれ、カリオットを倒し、魔王と対峙する存在となるじゃろう。それの準備と思ってくれていい。どうかね?」
「うーん」と悩んでいると竜王が語りかけてくる。
《僕は賛成だよ。カリオット戦のとき君には僕の魔力に耐えうる器がないと言ったが、彼と修行をすればある程度は完成されるだろうよ?それに、これから能力もなしに僕の魔法だけでは確実に無理なこともある。君自身のレベルアップが必要さ。》
(なるほど。確かに一理ある。お前、最初嫌なやつかと思ってたけど、なんだかんだ良い奴だな!)
俺が素直な気持ちで褒めると竜王は「な!?」と言って照れてるようだった。そんなやり取りを心の中でしていると、現実にいるじいさんから「聞いてるかー?」と問いかけが来る。
「聞いてる!あんたとの修行の件だけど、お願いする!俺はみんなの呪いを解くために、今よりももっともっと強くならないといけない。それに、知りたいこともできたし…」
俺がそう言うと「知りたいこととな?」とテスカトは首をかしげながら聞いてくる。
「いや、なんでもない!!とりあえずよろしく頼む!じいさん!!いや、師匠!たのむよ!!」
「師匠か…ほっほっほ!久しぶりに呼ばれたぞ!」
そして、俺が魔法王に弟子入りをしていた際、時を同じくして魔王の城では不審な動きが起ころうとしていた。
ーーー魔王城
ここは魔王城。薄気味悪い明かりが灯る玉座。そこには魔王が足を組んで座っていた。
そして、魔王の目の前にはひれ伏すカリオットの姿がある。
「カリオットよ、我は悲しいぞ。作戦が失敗と言うことにな。我は貴様のことを信頼してこの作戦を実行させたのになぁ?」
「すみませぬ魔王様!このカリオット、一生の不覚でございます!しかしながら、今回収穫もございました…」
「収穫…?なに、申してみよ。」
「はい。竜王の、復活について…」
すると、魔王は高笑いをあげて魔王軍全体に命令を下す。
「フフ…フハハハハ!面白くなりそうだ!全魔王軍に通達。戦いに備えよ!全ての準備を整えるんだ!!久方ぶりの戦争だ!!」
魔王城でも、不吉な動きが始まろうとしていた。
そう、それはまるで、全ての歯車は揃ったかのように、魔法王の城でも、魔王の城でも、完全に止まっていた全てが動き出した。足りなかったランク=アインメルトという歯車のパーツが組み合わさり、噛み合い出したかのように…