Hachi_amumusanのブログ

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【第1章】修行開始!

 《そう言えばランク。君はカリオットと戦っているとき、悲しみや憎悪が溢れていたが、魔法王に出会ったあたりから言動や感情が落ち着いているよね?なぜだい?》

 城へ向けて走っていると、竜王が突然変な質問をしてくる。

 (なんでだ?)

 《いや、特に理由はないが、少し気になってね…》

 (まぁ、そうだな。師匠は魔法でシュナたちを助けてくれた。それで、気持ちが落ち着いたってのもあるんだが…)

 《あるんだが?》

 竜王は本音の理由を知りたいのか催促するように聞き返してくる。

 (うーん。いや、今言うのはやっぱ辞めとく!今度機会があるときな。)

 《えー!教えてくれてもいいじゃないかー》

 竜王は俺の心の中で「ケチケチー」と言いながらブーブー言っている。何だか、シュナと会話していた時を思い出してなのか懐かしい気持ちになる。

 そうこう話をしていると、城が見えてくる。

 (ギリギリだけど間に合いそうだな。)

 《とは言っても後5分くらいだけどね》

 (余計なお世話だ。遅れなければ、何分前だろうが、ピッタリでも問題なし。)

 俺がそう言うと、竜王は両手を上げ、首を振りながら「やれやれ」と言っていた。

 《出る時はすんなり行けたけど、門番の人に言わたろ?入る時は3分程時間がかかるって。》

 そう、実は組合長へ会いに行くために修行開始

 前の残り時間を使い外出してた訳だが、その時門番に「3分程入る時には時間をもらいます」と注意を受けていたのだ。

 (やばい!完全に忘れてた!!)

 こうして、俺の修行初日は遅刻から始まった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 俺は今、修行のために魔法王専用に造られたという魔法実践用の訓練場にいた。

 「気の緩みは心身の緩み!今後は気をつけるのじゃ!」

 「すまない師匠。これからは気をつける」

 俺はそう言って謝罪の意を込めてお辞儀をする。

 すると、「まぁ、今日は大丈夫じゃ」と言って師匠は話を進める。

 「それはそうと、ランクくん。少し顔つきがかわったのぉ。なんだか、覚悟が決まった男の顔をしているぞ?」

 「まぁ、守るものを。守るべきものを再確認出来たからかな。」

 俺は、師匠の目を見て今思ってることを真っ直ぐに伝えた。

 「やはり君は良い。さて、早速始めるとしようか、ランクくん」

 「おう!」

 俺は拳と拳をドンッと叩き合わせ気合を入れる。

 「さて、ランクくん。突然だが、君は“精霊”と“詠唱”について知っているかね?」

 「精霊って、詠唱のときに言うなんとかってやつだろ?あと、詠唱はわかる。魔法を使う時の定型文みたいなやつだ。」

 「うむ。不正解じゃ!」

 そう言うと、師匠は精霊と詠唱について説明を始める。

 「精霊とは、魔法を扱う上で我々が召喚している存在なんじゃ。」

 「召喚?」

 俺は、聞きなれない単語に首を傾ける。

 「君たちは恐らく定型文を覚えて、魔法をただただ唱えていると思うが、本質は全く違う。定型文と思われているあの詠唱は、精霊の召喚と魔法のイメージを精霊に伝えるという役割がある。その結果、召喚された精霊は属性へと変化させた魔力を魔法という形へと変化させてくれるのじゃ」

 「精霊?でも俺たちはたしかに自分の魔力を変化させて魔法を使っているはずだが、んん??」

 すると師匠は俺の理解出来てない様子を見て、「順を追って説明するぞ」と言って説明を加える。

 「まず精霊についてじゃ。精霊はこことは違う世界に無数に存在しているとされている。そして、その精霊は魔法発動の補助役と呼ばれているのじゃ。」

 「補助役?」

 「そうじゃ。そう呼ばれる所以は後々話すとして、彼らは我々の声に答え、詠唱の際に召喚される。その際魔力を対価として無意識に我々は精霊に魔力を渡している。それが召喚に伴う魔力。“召喚の魔力”じゃ。」

 師匠は左手の平を見せ、「これが召喚の魔力とする。」と言って俺に見せる。

 「次はこっちの右手じゃが、これは属性となる魔力。“属性の魔力”じゃ。ランクくん、五大属性と変質二属性を知っておるかな?」

 「五大属性って言うと、火、水、地、風、雷だろ?確か、火は風に強く、風は地に強く、地は雷に強く、雷は水に強く、水は火に強いだっけか?あと、変質二属性は、五大属性の法則に全く当てはまらない光と闇の属性で、お互いに弱点であり得意であるっていう…」

 俺が記憶を辿りながらそれについて話すと、師匠は「大正解じゃ!」と言ってさっきの説明の続きを話し始める。

 「魔法を使う際、魔力をその5つと2つの内どれかに変えるじゃろ?その時に使う魔力が属性の魔力じゃ。まぁ、何が言いたいかと言うと、この2つを合わせる。これが“魔法の魔力”じゃ。」

 すると、師匠は両手をパンっと合わせて見せる。

 「分かったかな?精霊を召喚するのが“召喚の魔力”、属性へ変化させるのが“属性の魔力”。そして、それを合わせたものが“魔法の魔力”なのじゃよ。」

 「でもよ、なんで精霊を召喚する必要があるんだ?」

 「それは、魔力を属性に変えれても、それを魔法として変化させることは不可能に近いのじゃ。魔法はイメージによって形作る。じゃが、人のイメージ力だけでは無理だから、精霊の力を借り、イメージを補強するというわけなのじゃ。これが最初の方に話した魔法発動の補助役と呼ばれる所以じゃ。」

 「それは知らなかった。ってことは俺たちは無意識にその一連の流れを詠唱をすることで行っていたのか…」

 「そのとおり。昔は、召喚と属性の変化に多大な時間を要したが、今では決まった詠唱で2つを同時に行い、戦いへと魔法を発展させたのじゃ。」

 なるほど、と掌に握った拳をポンッと乗せるととある疑問が頭をよぎる。

 「もし…もしもの話だけど、精霊を召喚せずとも魔法を使えたら。それはどうなるんだ?」

 「面白いことを考えるな…試した人物がいないから確証はないが、詠唱が必要なく、魔力を属性へと変化させた段階で魔法が使用できる。大幅な時間短縮と効率の良い魔力使用が可能になる。だが、先程も言ったが不可能だと思うぞ?」

 その言葉を聞いた時に、俺の頭にとある記憶が思い出される。竜王の魔法を見た時だ。あの時竜王は、詠唱を詠まずに初級魔法の球炎(ファイアボール)を使っていたのだ。

 「なるほど。見つけた!俺だけの技を…!」

 「まさか、ランクくん!無詠唱の魔法を使おうというのか!?やめた方が…いや、ここでは、止めるのは無粋じゃな。ランクくんよ、無論ここでは、しっかりと基礎と応用を学び、魔法への見識も広めてもらう。だがその挑戦、わしも微力ながら協力するぞ。」

 そう言いながら師匠はこちらに手を差し出す。そして俺は、その手を感謝の意を込め。すぐに握った。

 「ありがとう、師匠!」

 「なーに、大船に乗ったつもりで任せなさい!さぁ、魔法については教えた。これからは実戦形式での修行じゃ!!覚悟はいいか!」

 「覚悟は出来てる…!なんでもやってやる!!」 

  そして、修行は約4時間の間ノンストップで進んだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 「痛ててて…師匠強すぎるよ。」

 「まだ若いのぉ。だが、流石じゃな!分身とはいえ、カリオット倒すだけはある!」

 「でも、まだまだだ…結局師匠に攻撃当てられなかったしなぁー!」 

 そう言って俺は、地面に倒れる。

 「あ、そうじゃ。今日はこのあと何も無いから、リリアルちゃんのとこでも行ってきたらどうじゃ?」

 「リリアルのとこ?なんでだ?」

 「はぁ…分かってないのぉ。女の子が1人で、罪人とかもいる地下で事情聴取を受けてるのじゃぞ?心細いじゃろうて…そういうことも学ばないとダメじゃぞ?」

 「そういうもんなのか…」

 そう言って俺は、疲れきった身体を動かし、尋問室へと向かった。

 尋問室は城の地下に存在していて、罪人などを幽閉している場所だ。さすがに、1人では迷子になるので看守の人にあんないをたのんでいる。にしても寒い。地下だからだろうが、上との寒暖差がありすぎて凍えそうである。

 すると、尋問室と書かれた看板のある扉で看守の人は立ち止まった。どうやら到着のようだ。

  「ここが事情聴取を行っている尋問室です。」

  「ありがとうございます。」

 看守の人へお礼を言って中へ入ると、そこには中央に机がと椅子があり、そこにはこちらを向くようにリリアルが座っていた。

 「久しぶり、リリアル」

 「ランクさん!お久しぶりです」

 俺が声をかけると、パァと顔を明るくして立ち上がる。最初の方から思っていたけどこいつ小さいし可愛いな。小動物みたいだ。

 「朝は本当にありがとうございました。アンクさんがいなかったらもしかしたら今頃幽閉されてたかもしれません…」

 「いや、礼は良いよ。礼を言われることもしてないしな。」

 そう断ると、リリアルはプクーとほっぺを膨らまし、「ダメです!ランクさんが良くても私が良くないんです!!」と俺の方を見ながら言う。おいおい、ほんっとに可愛いな。

 「あ、そう言えば、俺の事をさん付けするのやめてくれよ。呼び捨てで頼む。仲間からはそう呼ばれた方がしっくりくるんだ。」

 「仲間ですか…本当にありがとうございます。なんだか貰ってばかりですね…」

 そう言いながらリリアルは涙を流し始める。

 「おいおい泣くなよ!なんでそんな泣いてるんだよ。」

 すると、リリアルは涙を流しながら俺の質問に答える。

 「私、昔から一人ぼっちで…しかも奴隷の出身だったんです。この耳のせいで…」

 すると、リリアルは髪で隠してた耳を出す。その形状はエルフよりも少し小さく、尖った特徴的な耳が出てくる。ハーフエルフの証拠である。

 「私はエルフ国の出身で、人とエルフの間に産まれました。」

 「でも、エルフって言ったら人族の中でも美しい部族として有名だよな?人気あるし。なんで奴隷なんかに…」

 俺が、そう質問するとリリアルは下唇をグッと噛みながら、堪えるように答える。

 「ハーフエルフは異形の存在とされていて…たしかに、エルフは人族の中でも特異な存在ですが、魔力の操作に長けている点や美しさから人々から好かれています。しかし、ハーフエルフは人間でもエルフでも無いという点で嫌われているのです。」

 「そうなのか。俺の村にはそんなのなかったから全然知らなかった。」

 「たしかに、奴隷制度が取らているのも一部の国のみですからね。知らないのも無理はないです。」

 この世界の半分に存在する人族は大きく分けて3種類いる。人間、エルフ、亜人である。エルフは基本人間の容姿だが、耳が尖っているという特徴があり、魔力コントロールに長けているという特徴もある。そしてもう1種類の亜人は、動物の耳と尻尾を持っていて、こちらも基本的には人間だが、力がとてつもなく強いという特徴がある。

 「奴隷になるのは、基本的にはハーフエルフや半亜人といったどちら側でも無い中途半端な人達です。私もそういう経緯があって嫌われていました。それに、もうひとつだけあるんです…」

 「もうひとつ?」

 「エルフは魔力コントロール亜人は超人的な力がありますが、そのハーフはどちらもその特殊な力が強化されているのです。これにより、人間とエルフ、亜人から嫌われる異形の存在として奴隷にさせられるのです…」

 「そうなのか…」 

 リリアルは一瞬悲しそうな顔をするがすぐに顔を明るくして、笑顔で話を続ける。

 「ですが、そんな時に助けてくれたのがクロム様でした!あの人は、そんな異形の存在である私たちハーフを従者として雇ってくれました。あの人が他人を馬鹿にしたり、下に見るのは、なめられて馬鹿にされないようするためで、私たちハーフに危険が及ぶことを危惧してなんです。」

 「そうだったのか。あいつもただのバカで間抜けな貴族じゃなかったのか…」

 「そうなんです!!」

 リリアル目をキラキラさせてこっちへ近づく。

 「そう言えば、話は変わりますがランクさん…あ!ランクははどうしてそうも前へ向けるのですか?私は大事な人が傷つけられるのを見て、とても恐怖心などがあります。でも、あなたは試験で会った時と同じです。」

 リリアルが朝に竜王から聞かれたことと同じような内容のことを聞いてきた。

 「あー、まぁ言うのは恥ずかしいんだが…」

 「お願いします!ずっと気になっていて…」

 こうもお願いされると、無下にできないということで、俺は包み隠さず答えた。

 「たしかに、俺も大事な人を傷つけられたよ?でもさ、それで悲しんでなんにもしないなんて、ダメだと思ったんだ。だから、前向いていつも通りでいようって…もちろん復讐したいって気持ちや魔族への憎悪とか怒りとかはあるさ。でも、戦いの時以外はシュナといた時のいつも通りの俺でいようと思ったんだ。」

 そう言うと、リリアルは目を輝かせて、コクコクと頷く。

 「へぇ!素敵ですね!私もそう思えればいいのですが…」

 「思えるさ!クロムは確かに、今は拘束状態だ。でも死んだわけじゃない!だから、リリアルもクロムといた時のいつも通りの自分でいて良いんだよ!」

 俺はリリアルの肩を掴み、目をみて言った。

 すると、リリアルは頬を少しだけ赤く染め、「ありがとうございます!」 と何度もお辞儀をしながら言ってきた。さすがに、こんだけ感謝されると照れてしまう。

 帰り際、俺が「また会いに来る!今度はここじゃなくて外で会おう!」とリリアルへ言うと、「まだ、尋問室なので、お礼は何も出来ないですが、必ずお礼しますね!!」言って手を振ってくれた。その姿もとっても可愛い。

 そして、看守の人に再度地上へ案内してもらっていると竜王が話しかけてくる。

 《僕には言わないで、無自覚にあざといチビ女には言うんだね!》

 (なーに、怒ってんだよ。お前もチビだろ?嫉妬してんのか?)

 すると、竜王が慌てて否定を入れる。

 《し、嫉妬じゃないさ!それに、今はチビだけど僕の本当の姿はボッキュボンのスーパーボディなんだからね!》

 (へー。それが本当ならすごいな。)

 《あ、信じてないなー?本当なんだぞ!》

 (ハイハイわかったよ。)

 俺はあしらうように竜王へ言った。そして、ふと師匠との会話を思い出し、竜王に頼み事をする。

 (そうだ、俺に無詠唱の魔法を教えてくれよ!お前がやったみたいにさ!!)

 《あー、魔法王の彼と言っていたやつだね?》

 (そうそう!)

 俺は、その経緯を詳しく説明する。

 《いいよ。君を強くすることは僕の願いだからね。》

 竜王が快諾してくれたので、ホッとしているととある問題を思い出す。

 (ありがとう竜王!だが、問題があって、朝と昼は師匠との修行だし、夜は事情聴取も入ってるらしいんだ…)

 《それなら問題ないよ。僕が君の心の中に居るということを忘れたのかい?君が寝ている時間に心の中で修行さ!!》

 (なるほど!マジで助かるよ!)

 俺がそう言うと、竜王は自慢げに「だろだろー!感謝はー?」と言ってくる。ちょっとだけウザイな…まぁ、とりあえずこれで、修行漬けではあるが、強くなるための算段はついた。これから絶対に強くなって、カリオットのやつを倒す。

 こうして、俺の修行ライフが始まったのだ。