Hachi_amumusanのブログ

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【第2章】悪魔の誤算

 「ランク=アインメルト!!諦めたのか?俺の黒薔薇(ブラッディローズ)を生身の体に受けるとはなぁ!!」

 俺がやつの魔法、黒薔薇(ブラッディローズ)受けたことを見て、リアムズは俺を完全に仕留めるために、こちらへと近づく。

 それは、黒薔薇(ブラッディローズ)が持続力が高い魔法なために、相手を殺すという点においては決め手に欠けるからである。しかしながら、攻撃力が弱い魔法という訳でもなく、無論ダメージは受ける。

 だがしかし、俺はタダで相手のダメージを受けるほど、簡単な男じゃあない。

 「現在の距離…約10メートル、9、8…」

 「何をブツブツと言ってやがる!!てめぇはここで死ぬんだよ!!この反転のリアムズ様によってなぁ!!余計な真似は死を惨めにするだけだぜぇ?」

 「5、4…今だ!リリアル!!」

 俺がそう叫んだ瞬間、リリアルは、黒薔薇(ブラッディローズ)を避けるのを一旦終了する。そして、リリアルのステッキ『滅魔の証(デビルブレイカー)』が光を発する。

 「馬鹿か!!ランク=アインメルト!貴様の仲間の女になんの魔法を発動させたかは知らんが、全てはこの『反転(リバース)』によって無と化す!!無意味無意味無意味イィィイイィイ!!!」

 「無意味?本当にそう思うなら、今からてめぇの右の腕を見てみろや。クソ悪魔よ。」

 「あ?何を言って……あ、あぁぁぁああぁぁ!痛いぃぃいいいぃ!!わ、私の…う、腕がぁあぁああ!!」

 リアムズの腕は、グチャッという生々しい音を立て空中へ血をぶちまけながら飛散した。

 「リリアル、次はもう片方の左腕を狙え。」

 そして、その俺の言葉と同時にリアムズの左腕が右腕同様に飛散する。

 「ぐ、あぁぁああぁ!!ま、まただぁぁ!!…私の、腕…わ、わた、私にな、なにをしたぁああぁあ!!私の『反転(リバース)』は無敵の能力のはず…!それを掻い潜った!?いや、ありえない…だがしかし、私は現にダメージを受けてるわけで…」

 「あら、リアムズ。まだ分かってないんですね。ランクと私にあなたはまた嵌められたのですよ?最も、今回の作戦立案はランクでしたけど」

 「なん…だと…しかし、貴様たちにそんな、そんな素振りは一切確認できなかった!!一体いつ…一体いつ!!」

 「そうだな…お前の敗因となりゆる今回の要因は、俺とリリアルにお前という存在を認識されたという事だ。お前は、サラ=ノールという冒険者に成り代わり、俺たち2人を欺き殺そうとした。しかしながら、そこが失敗とも言えよう。お前はことを焦りすぎたんだ。トントン拍子とも取れる展開を俺とリリアルが疑わないはずがない。サラ=ノールという女性のことについては、性格や仕草までもを周りの村人から情報を集めることができる時間は十二分に存在したしな。」

 「ま、まさか…そういったことで私は全てを勘づかれて…だが!村人から聞いた?それはありえない!!奴らは私と管理下にあるのだ!」

 リアムズは、声を荒らげる。恐らくは、信じられない事の連続に、認識が追いついていってないからであろう。しかし、それが真実。やつは、能力に縋りすぎ、傲慢になりすぎたのだ。

 「だろうな。そんなことは、お前の存在を疑い始めた時から予想の範疇だった。だから、使ったのさ。『精神干渉魔法(マインドサーチ)』をな。」

 「そ、その魔法は…!?」

 『精神干渉魔法(マインドサーチ)』とは、魔力に自分の意識を僅かながらではあるが加え、相手へと流し込む魔法で、これにより、相手の精神の奥深くへと入り込むことができ、一定の情報を相手に気づかれずに知ることが出来るのだ。これは、特殊魔法という通常魔法とは全く異なる魔法の一つであり、特殊魔法は熟練の魔法使いでも行使することは難しく、エルフやハーフエルフなどの魔力操作を得意とする人族が使用することが多い。ちなみに、特殊魔法には回復魔法も該当している。

  「こっちには、エルフ以上の天性の魔法センスを持つハーフエルフのリリアルがいるんだ。高難易度の特殊魔法も、2年間の修行で習得している。お前は、俺たちの情報を知らなすぎたんだよ。」

 「クソ…だ、だが、俺の腕をぶっ飛ばした説明にはなってないぞ!これまでの一連の流れ、確かに見事なまでに私の負けだ。情報戦という戦いにおいて、貴様らに遅れをとっていた。しかし、能力についてはさすがに分からなかったはずだ!それに、我が能力『反転(リバース)』はまさに無敵。それを掻い潜った方法とは、一体…」

 「それは、私からさせて頂きましょう。両腕を落とされ、瀕死のあなたへの最初で最後の慈悲です。」

 リリアルはそう言いながら、俺の前へと出て、説明を始める。

 「まず、第一として私たちがあなたの能力について知ったのは、先刻の出来事。だから、ランクがあなたから攻撃を遠距離から受けたことは予想外の出来事だったのです。しかし、それにより、あなたの能力をランクは見抜いた。そして、私はランクから、合図をしたと同時にとある魔法を発動してくれと言う言葉をもらいました。」

 そう、実は俺は黒薔薇(ブラッディローズ)を避けている際に、リリアルへそう呟いていた。そして、その合図…それこそが攻撃を受け、魔法発動のタイミングを大声で叫ぶこと。これにより、やつの気を引き、油断を誘うことにも成功した。

 「そして、あなたの能力『反転(リバース)』は一見無敵とも取れる能力ですが、とある穴があります。それが、あなたの能力は広範囲に、そして無差別にその効果が発揮されることです。それが今回は私の回復魔法に反応したのです。そう、そのランクが私に頼んだ“とある魔法”とは、回復魔法だったのです。正直、これには私も驚きました。」

 「か、回復魔法だと…!?まさか…貴様ごときが魔法王の回復魔法を…!?」

 「えぇ、そのまさかですよ。私が魔族への復讐を糧にすごしたこの2年間。それは、無駄に過ごしていた訳じゃあありません。魔法王様にその期間、回復魔法について教えて頂いていたのです。」

 だが、それを聞いたリアムズは、腕の痛みのためなのか、声を掠られせなが叫ぶ。

 「ふ、不可能だ!確かに貴様の言う通り、私の能力は遠距離タイプの能力…だから、貴様が私に回復魔法を唱えれば、反転の対象となる。しかし、それが仮に反転し、回復から破壊になったとて、その振り幅から魔法は消滅するはずだ…!」

 「その振り幅を小さくしたんですよ…私は。あなたは、回復魔法を反転させたことがないために、それを受けるケースを一切考えていなかったんですね。」

 「振り幅を…はっ!?」

 何かに気がついたのか、リアムズは目をギョッとさせる。その何かとは、本人にすら気づいてなかった能力の穴である。それこそが、この能力の根本を支えている反転された際の変化の振り幅だ。反転されれば、それは、対極のものに変化する。火は氷や水へ、光は闇へと言うように。そして、今回は回復が破壊へと反転されたのだ。

 通常は、魔法の威力的に全ての魔法は反転した瞬間に消滅する。しかし、その例外が一つだけ存在する。それが、回復魔法だ。回復魔法は、傷口を治す程度から、切断された腕などを治すものと多岐にわたる。そのため、他の魔法よりも振り幅の調整をしやすい。なので、消滅しずらいのだ。

 そして、もう一点。それは回復魔法を扱えるものがこの世界では、師匠とリリアルの2人だけであり、リアムズが回復魔法使用者との戦闘が皆無という点だ。これが、やつを混乱させるまでに至った。これが、一見無敵とも取れるやつの能力の大きな穴だ。

 「てめぇは、もう負けているんだ。リアムズ。死ぬ前にせめて、お前の知る全てを吐いてもらうぞ。」

 「わ、私はまだ負けてなどいないぞぉぉおおぉ!!貴様らなど、わ、私が本気を…ぐぁああぁぁああぁ!!」

 リアムズの会話の途中で、リリアルがさらに追い打ちをかけるように、リアムズの右足へ回復魔法をかける。

 「あなた、今逃げようとしましたね?私が話に気を取られるとでも思ったのですか?私の回復魔法は、ステッキに仕込んだ魔法陣で唱えています。残り数は2回…あなたを絶命させるには十分です。それに、私の武器『滅魔の証(デーモンブレイカー)』の特性『攻撃魔法を魔族に与えた際に、威力が何十倍にもなる』で、回復から破壊という攻撃魔法へ変更されたことにより、あなたに当たる瞬間に、その特性が発揮され、傷を作る程度が、あなたの四肢をねじり切る程の威力となったのですよ。」

 それを聞いたリアムズは、自分の今置かれている立場、自分が取らなければいけない行動、その全てを察したようだった。やつからは、先程までの覇気は全く感じられず、疲れ切り、燃え尽きたようにグダったしていた。

 「あと、10秒だけ数えます。それまでに、今回の計画の経緯とその全貌を言わなければ、左足も破壊します。はい、10、9、8……5、4…」

 そして、数字のカウントを聞き、最初の方は耐えてはいたようだったが、リアムズは次第に青ざめていき、人が変わったように叫んでいた。

 「分かった!!わ、分かった!!言う!!言うからぁ!!もう痛いのはやめ……ぐ、あぁああぁ!!なんでぇええぇぇ!?なんで、攻撃するんだよぉぉおおぉ!?」

 「あー、すいません…10秒のカウント中に気が変わったんですよ。その言葉が嘘だったら困るので。でも、大丈夫。魔族は、痛みは感じているでしょうが、それくらいでは死にませんし、今の四肢をもがれたあなたにはナイフだって容易に当てられます。絶対に吐いてもらいますよ。絶対に…!!」

 そして、それからはナイフを何度も、何度も何度もリアムズへ突き立てた。リアムズが全ての真実を語ろうとするまで。

 「分かった…もういい。全てを話す。包み隠さず真実を…」

 そう言うと、リアムズは今回の経緯と計画の全貌。その全てを語りだした。