Hachi_amumusanのブログ

都市伝説、ゲームやブログ小説など趣味の範囲で幅広くやって行きます!!

【第2章】隠された悪

 「ランク!!起きてください!出発の時間ですよ!」

 まだ日が昇り切ってない朝、俺はリリアルの可愛らしいモーニングコールで目を覚ました。

 「ふぁ〜。お、リリアルか…もうそんな時間か。」

 「そうですよぉー!じゃあ、準備お願いします!あ、あとですね…き、昨日ことー…なんですけど…覚えていますか?」

 「あ?そう言えば、昨日の記憶が風呂入ってお前らと作戦話し合った後から曖昧なんだよなぁ…それに、何故か頬が痛てぇ。」

 俺がそう言うとリリアルは「よ、良かったぁ」と安堵の声を浮かべていた。

 しかしだ。ふむ、覚えていない?否。全て記憶にはいってマース!いや、だってそうでしょ?あんな奇跡体験普通に覚えてるでしょ。覚えてなきゃ完全にホモだねそれは。

 まぁ、そんなことを正直に言えば、またリリアルのクリティカルビンタが俺の頬をぶち抜くことはもはや明確なので、空気を読んで嘘をつく。これができる大人の対応である。

 「ちょっとお二人さーん!イチャつくのも大概にして、早く支度をしてくださいねー!」

 サラの言葉を聞きリリアルが我に返ったかのように慌てて準備等に取りかかっていた。

 俺も急ぎに、武器や道具の準備などに取り掛かる。何があるかは分からないので、少し多めに準備をしておく。

 「さてと、それじゃあ捜索と行きますか!」

 俺たち3人は宿を後にして、日が登りきる前に捜索するため、急いで付近の砂漠へと赴いた。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 デザト村は、数ある村の中でも観光業に富んでいるために、比較的に裕福な村である。そのため、面積がとても大きく、大規模な村である。ちなみに、俺の地元であるラック村は、基本的に自給自足の村であるため、規模はあまり大きくはない。

 「じゃあ、ランクさん!リリアルさん!デザト村の周辺を捜索致しましょう!もしかしたら新たな被害者がいる可能性もありますしね!」

 「了解だ。あとよ、被害者って今のところ何人くらいなんだ?」

 「そうですねぇ〜…今のところは3人が発見されていますよ。」

 その3人とは、サラの父、コゴ=ノールと村外からの冒険者だと言う。この話を聞く限りでは、敵は無差別に標的を狙っていることが分かる。しかし、現段階では情報が少なすぎるため、そう断定するのは少々早い可能性がある…。俺たちはあらゆる状況に対処する必要性があるだろう。

 「それでは皆さん!昨日説明した通りの作戦で今日は行きます!二手に別れたあとは、村の外周を捜索し、合流した時点で折り返してもらいます!」

 「了解だ!」

 俺がそう言うとそれに続いて、サラも、「それでは、レッツゴーです!」と声を出す。

 そして俺達は、二手に分かれて、謎のモンスターの捜索に出発した。

 

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〈ランクサイド〉

 現在ランクは、捜索を始めてから約1時間が経ち、約半分ほど歩いた地点にいた。相手モンスターの情報は全て謎という点から、一つ一つの気になる箇所を探しながらの捜索になるために、そこそこの時間がかかっていた。

 「うむ、変わったところは全くないな。あいつらの話だと、1人の俺は真っ先に狙われて殺されるという話だったが…」

 《そうだね。確かに変わったことは今のところは全くない。昨日と代わり映えのしないただの砂漠だねぇ。》

 「そうなんだよなぁ。ただ、万が一もがあるからしっかりとした捜索は大事という訳で、手は抜けない。」

 ランクは竜王の力を借りることで、魔力探知を発動させていた。その魔力探知では、半径1km以内の魔力を持つ生物を大小関係なく探ることができる。しかし、生物と物質を判別することが出来なく、魔力を完全に消せる生物の場合は探知が出来ないと言う短所もある。

 「にしても暑いなぁ…しかも、何だか…気持ちの問題かもしれんが、喉がカラカラだ。だが、その割にあまり汗をかいてないんだよな。」

 《カバンに、水の入った水筒があるでしょ?それ飲みなよ。我慢はこういう場合には禁物さ。》

 「あ、そう言えばそうだったな。ナイス竜王!」

 そう言うと、ランクはおもむろにカバンのボタンを外し、中から水の入った水筒を取り出す。

 「ふはぁ〜!うめぇなぁ!こういう暑い日に飲む水はさ!さて、元気になったことだし、捜索再開だ!」

 《お、おい…ランク!!君のその腕!一体どーしたんだ!!》

 「あ?腕??一体何を言って…!?なにィー!!なんだこりゃあ!!」

  ランクのその腕は、ハリのあった腕ではなく、まるで老人のような、細い枯れ木のような腕となっていた。

 

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〈リリアルサイド〉

 同時刻、ランクと同様にリリアルとサラのペアも約半分ほどの地点へと到達していた。

 「リリアルさん。どうしたんですか?そんな思い詰めた顔して。」

 サラは難しい顔で「うーん…」と考え込んでいるリリアルへと質問をする。

 「実を言うと、少々気になっていたことがあったんです。」

 「気になっていること?」

 サラはリリアルの言葉を復唱するかのように質問をした。その言葉に、リリアルは何かを感じたのか「勘違いしないでくださいね?」と焦りながら言って、言葉を続ける。

 「少し見落としていたのですが、何故この村はこんなに通常通りなのだろうと思いまして…別にサラさんやこの村の人を疑っている訳ではありませんよ!?でも、誰一人としてそれに危機感を感じていないというか…私達もサラさんからその話を聞くまでこの不穏な空気を感じ取れませんでした。」

 その言葉を聞いたサラは「あーそういうことですか。」と一言いって、立ち止まる。

 それ見たリリアルは、一体どうしたのだろうと思い、振り返ってサラの方へとつめよる。

 「私たちの村は観光業で成り立っている村と言いましたよね?実はそれが関係しているのです。」 

 「関係?一体どんな関係が…?」

 「この村は、砂漠に存在している唯一の水と温泉の村と呼ばれています。そのため、この村の観光業には村人総出で尽力しています。だから、観光客の皆様の為にもそれを悟らせないようにしているのです。」

 サラはリリアルに全てを説明した。その村の、デザト村の全てについて。

 「それは…なんというか…とても酷いです!だって、お父さんが亡くなったのにサラさんは悲しめないし、ほかの村人の方々が亡くなっていても、ダメなんですよね!?なんですかそれ!!」

 「ありがとうざいます…リリアルさん!あなたくらいですよ!私たちのことをここまで考えてくれるのは…」

 「いえいえ、当然ですよ!そんなことを決めた人達に説教したいです!」

 その後も、リリアルとサラは村のことについて話しながら、そのまま合流地点へと到着した。

 「早く着きすぎたんですかね?ランクがまだいません。」

 「あれれー、ほんとーですねぇ。ま、先に引き返しましょう!捜索から2時間が経っていますし、もしかしたらランクさん、うっかり先へ行ったのかもしれないです。」

 「うーん…それもそうですねぇ。恐らく、先へ行ったのでしょう!」

 リリアルはそうサラに言うと、リリアルを先頭に2人は道を折り返し始めた。

  現在、ランクは消息不明(既に折り返した可能性があり)。そして、リリアルとサラの2人は折り返していた。

 ただ、捜索中の道を折り返し始めたリリアルは、水面下で動きつつある悪意に気づいていないのであった。