Hachi_amumusanのブログ

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英雄と6人の王【第1章】冒険者適性試験②

 「ランク!あなたの上級魔法で、あそこのモンスターを焼き払ってちょうだい!その隙に私は罠魔法を仕掛ける!」  

「りょーかいだ」

 現在、俺たちは魔法演習用のフィールドにいる。今はまさに、冒険者適性試験の最中である。

 俺は、シュナの命令通りに、上級魔法の詠唱を始める。

「力の源である我が命ずる。火の精よ、その真紅の炎を持って、大いなる豪炎をもたらしたまへ!」

 「豪球炎(ザ・クリムゾン)!!」

 なぜ、俺たちがこんな場所で戦っているのかと言うと、時間は約2時間前に少し遡る。

 ーーー2時間前

 「昨日来た冒険者組合前の広場に集合って言ってたけど、こんな所で試験を始めるのかしら?」

 「うーむ、確かにそうだな。俺はてっきり荒野や森とかで行うものだと思っていたが、もしやこれから移動するのか?」

 現在は昼。太陽の光がちょうど真上にある時間帯だ。

 俺たちは冒険者適性試験のために冒険者組合前にある広場に来ていた。だが、どうもこんな所で試験なんぞできるとも思えない。ここには魔法陣が描かれているだけで、他には何も無い。第一、こんな場所で試験を始めれば結界を張ったとしても、街に被害がでてしまう。

 そんなことを考えてると、後ろから鼻歌を歌いながらこちらへ向かってくる男が、俺の肩に手を置き話しかけてきた。

 「はぁ、これだから辺境出身の田舎もんはなぁ」

 小綺麗な身なりの男が典型的な嫌味を言ってきた。あ?やんのかこら!と心の中だけで威勢を張りつつ、俺は今の状況を知るため、その男に聞いてみることにした。もちろん敬語で。

 「はじめまして。私はランク=アインメルトと申します。適性試験がここで行われると聞いたのですが、こんな場所で行うのですか?このままだと街に被害が出ると思うのですが…」

 どうだ!この俺の世渡り術!必殺「とりあえず下手にでる」だ!別に相手が怖かった訳じゃないよ?決してね!

 そんなことを思っていると、小綺麗な身なりの男が「しょうがないなぁ」と面倒くさがるように、ため息混じりに呟く。

 じゃあ話しかけんなよ、と思っているとその男は自慢げに語り始めた。

 「この魔法陣があるだろ??これは転移魔法の術式魔法陣だ!これで、魔法王様がお作りになった特殊結界が張られた空間へと転移するのだ!」

 「なるほど…。この魔法陣は結界ではなく転移なのか。道理で難しい術式なわけだ。ありがとうございました。」

 と、俺が納得した様子で感謝の言葉を述べると、男は腕を組み、俺を見下すように視線を向ける。

 「ふんっ!光栄に思えよ?辺境出身の庶民。私は、クロム=ルーズベルト。偉大なるルーズベルト家の貴族であるぞ!そんな私に教えて貰えたことを有難く思えよ?」 

 なるほど、こいつ貴族だったのか。道理で身なりが周りと比べて、ずいぶん小奇麗なわけだ。

 するとシュナが、怒りをあらわにした顔でクロムのことを見る。

 シュナやめてよ?せっかく俺の必殺「とりあえず下手にでる」で貴族様に不快な気持ち与えずに済んでるんだからね?争いごとは嫌いよ?

 「あんたねぇ!貴族だかなんだか知らないけど、冒険者登録をしたなら身分は同じよ!対等に話なさい!このイキリ野郎!!」

 案の定シュナが怒り始めた。

 こいつ、曲がったことは野菜の次に嫌いだからなぁ。まぁ、確かに冒険者登録をした人間は貴族であろうがなんだろうが冒険者と言う身分に統一されるんだが、争いごとはめんどくさい。正直試験前に暴力沙汰はほんとにやばい。

 最悪、俺の最終兵器「ジャンピング土下座」を御見舞する羽目になってしまう。

 「この女!誰にものを申してる。我はクロム=ルーズベルトであるぞ!貴様のその言動、貴族を敬わない言葉の数々は『不敬罪』に当たるぞ!!」

 「そんなの知らないわ!同じ冒険者という身分なのに不敬罪もクソもないわ!」

 クロムの発言に挑発されるように、シュナも怒りを露わにする。

 クソっ。まさかこんなに早くとっておきの最終兵器を御見舞する羽目になるとはな…。

 俺が覚悟を決めて、「ジャンピング土下座」の準備に入ろうとした瞬間、突然辺りに謎の「ピー!」という音が響き渡る。

  「な、なんだ?」

 困惑していると、突然声が聞こえ始める。

 「こんにちは諸君。我は冒険者組合の長、ラルフ=ストロノーフである。」

 「ラルフ=ストロノーフってあの四賢者の1人の!?」

 シュナが声を張り上げて驚く。

 まぁ、無理もない。ラルフ=ストロノーフとは『四賢者』と言われていて、魔王の配下の最高幹部を倒した英雄の1人である。

 シュナに続くように、周りも驚きを隠せないでいると、ラルフ=ストロノーフを名乗る声は、試験の概要を説明し始めた。

 「君たちには、昨夜冒険者登録をしてもらった訳だが、君たちはまだ冒険者(仮)に過ぎない。これから受けてもらう3日間の試験では君たちの冒険者適正度を調べる。」

 「そのために、15歳となるまでに鍛え上げてきた、『魔法』『剣術』『体術』それら全てを駆使して、実戦形式でモンスターを討伐してもらいたい。そして、最終日には、君たちをS〜Eランクに適正度に応じて分けた後、パーティを組んでもらう。良いかな?」

 なるほど。どうやら、今回の試験は魔獣ではなく、モンスターを倒すことが試験内容らしい。恐らくは村で倒した『キングホース』並のがゾロゾロいるイメージだろう。

 「試験時間は約4時間。これまでに様々なモンスターを討伐してもらう。モンスターは強敵に応じてポイントを振ってある。無論強ければ強いほどそのポイントは高い。それが、試験の結果に大きく関わってくる。」

 「どうやら、三日間での合計ポイントを争うってことらしいな。」

  「そうね。面白いじゃない!!」

 「ちなみに、今回の試験の三日間は2人1組。いわゆるツーマンセルで試験を受けてもらう。パートナーは自分たちで決めて良いものとする。これで説明は終了だ。」

 ツーマンセルか。今回は運がいいな。シュナとのツーマンセルなら村で嫌になるほどやったし、シュナとなら作戦も立てやすい。

 「あ、ひとつ言い忘れてた!その下の転移魔法。あと5秒で発動するから、パートナーとはグレないように手を握っててくれ。」

 「なにーー!!」という受験者たちの声が一斉に街へ響き渡る。

 「おい、シュナ手をよこせ!」

 俺は急いでシュナに声をかける。するとシュナもそれに応えるように、俺の手をぎゅっと握る。

 すると、さっきの貴族様。クロムがこちらを睨んで、叫びだす。

 「貴様ら!俺を不快にさせたその不敬。絶対に許さないからな!!」

 やっぱり根に持ってたかぁ。と思っていると、あたりが光り始め、転移が始まった。

 そして、俺たちは見知らぬ野原へと転移した。恐らくは魔法演習用フィールドだろう。

 「試験開始!!」

 フィールド上に試験開始の合図がこだまする。

 すると、シュナが両手を振り上げながら、元気よく声を張り上げる。

 「燃えてきたじゃない!」

 いやいや、あなたが喧嘩ふっかけた貴族様のことで俺の不安はいっぱいなのだが…。

 俺のそんな不安を他所に、シュナは走り始めた。それに続くように俺も走り始める。

 そうして、長い試験は始まった。

ーーー2時間後

 「豪球炎(ザ・クリムゾン)!!」

 俺の上級魔法がモンスターの大軍に直撃する。

 「力の源である我が命ずる。地の精よ、我が声に答え、地の構造を造りかえよ!」

 「地縛(グランドレストレイント)!!」

 そして、シュナの上級魔法、罠魔法地縛(グランドレストレイント)が俺の豪球炎(ザ・クリムゾン)で、ダメージを負ったモンスターたちを襲う。

 「これで合計100体ね!」

 シュナが自信たっぷりに言い放つ。

 そう、俺たちはいい感じに試験のポイントを稼いでいた。