Hachi_amumusanのブログ

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英雄と6人の王【第1章】冒険者適性試験⑦

 「てめぇの、その余裕そうな面に1発叩き込んでやるよ!お前だけは絶対ぶっ殺す!」

 俺の怒りに反応するかのように、地面に亀裂がはいる。

 「ほう…面白い。それでは打ち込んでみなさい。あなたの魔法を。そしてわたしを楽しませなさい!人間!!」

 すると、カリオットの言葉に反応するように心の中から竜王が語りかけてくる。

 《ランク。憎いね、悔しいね。じゃあ、今こそ僕があげた力を使うときさ!君のその復讐心に比例するように、この竜王の力をは何倍にも膨れ上がる!僕を真似て詠唱をしてくれ。それが君に教える最初の竜王の技さ!》

 「分かった、竜王!これでお前を倒す!カリオット!!」

 「なにをブツブツと言っているのですか?さぁ、あなたの最高の魔法を見せなさい!」

 「あぁ、もちろんだ…!」

 そして、俺を完全に舐め切っているカリオットに向かって、竜王と共に、魔法の詠唱に取り掛かる。

 《力の源である“竜王”が命ずる。世の理を読み解き、魔の深淵を覗きたる偉大なる竜の精よ。我が竜王の名において、この拳に全てを焼き尽くし、全てを壊す力を与えたまえ!》

 「力の源である“竜王”が命ずる。世の理を読み解き、魔の深淵を覗きたる偉大なる竜の精よ。我が竜王の名において、この拳に全てを焼き尽くし、全てを壊す力を与えたまえ!」

 俺は、竜王に続くように魔法の詠唱を唱える。だが、この魔法を俺は1度使ったことがある。そんな気がしてならない。

 「竜王が命ずる?ヒーフッフッフ!傲慢なことを言う人間もいたものですね!!」

 「傲慢?違うぜカリオット。竜王の力の片鱗…お前に見せてやるよ!」

 《さぁ、ランク。準備はいいかな?》 

 竜王から確認の言葉がくる。

 「当たり前だ!いくぞ竜王!!」

 そして、俺は右の握った拳を左手で包み込むようにして、グッと引く。そして、魔法発動のために竜王に続くように魔法名を叫ぶ。

 《超魔法『竜拳(ドラゴンフィスト)』!》

 「超魔法『竜拳(ドラゴンフィスト)』!」

 魔法の発動の瞬間、真紅の炎に包まれた拳に、竜の顔が 浮かび上がる。俺はその拳を一気にカリオットに向けて突き出すとその炎は凄まじい威力となり、カリオットの元へと放たれる。

 「これは…この威力は…本物の竜王の超魔法!?なぜ、急にこんな力が人間に!?」

 すると、カリオットは両手を前に突きだし、慌てて魔法詠唱を始める。

 「力の源である魔王軍の幹部にして、10柱が1人の我が命ずる。最悪の魔の精よ、絶望を全てを防ぐ二重の魔防の盾に変え、我を災厄から守りたまえ!!」

 「大魔法『二重(ダブル)の絶望(ディスペアー)』!!」

  すると、カリオットの両手から二重の巨大な魔法の盾が浮び上がる。

 「この魔法は、周囲の人間の絶望が大きければ大きいほど、防御力を増すのです。私があなた達から集めた絶望と、私が放った魔獣によって他の人間から得た絶望により大幅な強化がなされていますよ!!」

 それを聞いた竜王が、余裕そうな口調で語り出す。

 《ふーん。大魔法の『二重(ダブル)の絶望(ディスペアー)』か。随分絶望を集めて強化したようだが、果たして防ぎきれるかな?》

 竜王の言う通り、カリオットは押し負けているようだった。俺たちを一瞬のうちに倒した魔族とはまるで、全く違う魔族なのかと思うほどに。そして、展開された盾に亀裂がはいる。

 「こ、このカリオットが…幹部にして10柱のうちの一人である私がこんな、と、所でぇぇええぇ!」

 そして、俺はさらに魔法に残りの魔力を込める。

 「いっけぇぇぇ!!!」

 その瞬間、カリオットの防御魔法は完全に粉砕され、竜拳(ドラゴンフィスト)がカリオットを貫く。 

 「ク、クソがァァアァアァァ!!!」

 カリオットの叫び声とともに、辺りは魔法の影響で深い煙に包まれる。

 「や、やったのか!?」

 《いや、残念ながら、まだのようだ。ちっ!魔王のヤツめ。保険をかけていたな!?》

 カリオットはボロボロになりながらもそこに立っていた。

 「こ、これはなんとも計算外。まさか、竜王が…魔王様の加護が無ければ消滅していました。」

 どうやらカリオットは魔法の加護とやらでギリギリ生き延びれていたようだ。しかし、そう上手くことが進むわけがない。いや、進ませるわけがない。先程の攻撃で、このときの魔力はほとんどなかったが、弱ったカリオットを倒すには十分な程だった。

 そして、俺はカリオットの元へゆっくりと近づく。

 「おい、カリオット。お前はもうすぐ俺が殺す。お前の悪運もこれまでだ。だが、最後に聞きたい。俺が気を失う寸前、『さらばです。アインメルトの子よ』と言っていたがそれはどういう意味だ!」

 俺は、両親のことを知りたいという気持ちもあったので、カリオットへとその疑問を投げかけた。

 カリオットはニヤッと不敵な笑みを浮かべる。

 「そ、その事ですか…ゲホッ…あ、あなたの両親を殺したのはわたしです!あなたの両親は幹部を1人殺しました。なので、私の手で始末して差し上げたのです!」

 カリオットはダメージからか吐血をしつつも、淡々と語り出す。

 「ゼェ…いやぁ、最後は滑稽でしたよ?仲間を含め4人のパーティでしたが、あなたの両親を残し、残りのふたりは逃走。そして、あなたの両親は必死にこちらへと懇願していました。『息子がいるからどうか助けてください』ってね!ヒーフッフッフ!」

 カリオットは「ゼェゼェ…」と息を切らせながら語り、そして不気味な笑い声をあげる。

 「その後、一体どうしたんだ…」

 「どうした?愚問ですね。もちろん殺しましたよ!1番ながーく苦しめるやり方でね!!」

 カリオットは嬉々としてそれを語る。

 「この外道が!!てめぇだけは絶対許さねぇ…!」

 この瞬間俺の復讐心は一気に最高潮へと至る。そして、それに比例するように、尽きかけていた魔力が上昇していき、その影響で辺りに地響きが鳴り渡る。

 《ランク、いいよ!その調子だよ!今なら絶対に殺れる。あの憎き魔族を倒そう!!》

 そして俺は、カリオットに力の限りの魔力を向け、それを一気に炎へと変化させ力の限り拳を振るう。

 しかし、カリオットを殴ろうとした瞬間、拳から炎は失われ、体から力が抜ける。

 「な、なんだ…!?」

 その瞬間、俺は体を支えることが出来なくなり、膝を着いてしまう。

 「ヒーフッフッフ!魔力の過度の使用によるオーバーヒートですよ!」

 「ど、どう言うことだ!!」

 《どうやら、身体が僕の魔力に耐えられなかったようだね。君のその復讐心はたしかに、大きな力をもたらした。しかし、それに耐えうる器を君はまだもてていなかったという事だよ。》

 竜王の言った通りのようだった。さっきまで膨大にあった魔力は体から抜けていき、力がどんどん抜けていく感覚がある。

 「ヒーフッフッフ!この勝負。引き分けとしましょう!私ももうずいぶんとダメージを負った。それに、目的の八割は果たしていますしね…」

 「おい、それは一体…」

 俺がカリオットに問いかけようとしたその瞬間、辺りに光が満ちる。

 《転移石か!?》

 すると、そこからカリオットは綺麗にいなくなっていた。まるで最初からいなかったかのように。

 「な、何が起こったんだよ。竜王!」

 《転移石さ。場所を記憶して、割ることで記憶された場所に移動する石をやつは使ったんだ。とことん抜け目のないやつだよ。》

  「クソ!カリオットめ…!俺をわざと怒らせて、オーバーヒートを誘ったのか!」

 俺は悔しさと自らの未熟さのあまり、地面を何度もなぐった。血が滲むほどに。

 今回逃した獲物はでかい。やつは恐らくさらに強くなってまた俺の前へと現れるだろう。今ここで消すべきだった。それに、他の人間にも危害を加える可能性もある。だが、何度現れても俺がこの手で倒す。絶対に…。

 「そうだ。シュナたちは!あいつらは大丈夫なのか!?」

 俺は後ろを振り返り、少ない力を振り絞ってシュナたちの元へと走る。

 どうやらまだ息はあるようだ。しかし、脈が薄い。危ない状態には変わりないようだ。

 《これはまずいね。早く医者を呼ぶべきだよ。カリオットの“能力”にも侵されてる。》

  「カリオットも言っていたが能力ってのはなんなんだ!どうしたら治るんだよ!」

 《僕は壊せても治すことはできない…それにランク。警戒した方がいい。なにか…来る!》

 「あぁ、わかってる!」

 すると、大きな衝撃音と風圧とともに、後ろに何やら巨大な魔力が現れるのを感知する。また魔族の襲撃かもしれない。せっかくシュナたちを助けられる可能性があるのに、今度はカリオットよりもさらに大きな魔力だ。

 衝撃の影響か、土埃が舞っていて何者かは確認が出来ない。俺は直ぐに全員を守れるように魔法の準備をしようとした。しかし、力が入らずうまく魔法が展開できない。

 「竜王!お前の魔力をもっとよこせ!」

 《無理だよ。今渡せばさっきの二の舞になるだけだよ!》

 万事休す。そう思っていた瞬間、風が吹き始め、あたりが晴れる。そして、その晴れた先に立っていたのは魔族ではなく、白髪で髭まで白い老人だった。

 「ありゃりゃ、こりゃ酷くね?」

 「は?」

 俺はこの緊急事態を目の前に、発されたその老人の軽率ともとれる言葉と巨大な魔力の正体に呆気に取られ、不覚にも「は?」という言葉が出てしまった。

 だが、この出会いが、俺のこれからを大きく変えることになることを、このときの俺はまだ知る由もなかったのだ…