Hachi_amumusanのブログ

都市伝説、ゲームやブログ小説など趣味の範囲で幅広くやって行きます!!

【第1章】知らなければいけないこと

 今は、カリオットによる冒険者大量殺人事件が起きてから約1日が経っていた。街は、洗脳をとかれた組合長とギルド長を筆頭に復興作業が行われていた。

 「さて、そろそろいいかな。」

 ここは魔法王の城。俺は昨日、魔法王へと弟子入りをした訳だが、その修行の前にとある場所へ赴かなければならない。それはどこかと言うと、ここ。シュナたちがいる安静室だ。

 ここでは、24時間いかなることからも緊急的に避難することが出来る魔法が付与されているのでとても安全で安心だ。

 シュナ以外は少しの時間しか一緒にいなかった。しかし、俺たちは少しの間だけでも仲間として戦った。だからこそ俺はこの復讐心をもってみんなを助ける。

 「だが、お前は別だ。リリアル=リーチェ」

 俺は、リリアルの寝ているベッドへと近づき、彼女の肩をトントンと叩く。

 「全く、バレているとは思いませんでしたよ。ランクさん」

「やっぱりか。師匠が現れた時あのフィールド全体を感知したが、明らかにお前だけ様子がおかしかった。たしかに、致命傷の傷を負ってはいたが、お前だけ意識はハッキリしているようだった。能力にかかっていないという証拠だろう?」

 リリアル=リーチェ。こいつは出会った時から警戒していたが、やはり油断ならないやつだった。どうやったかは分からないが、カリオットの拘束を完全に打ち破っている。

 「フフ…不思議そうな顔ですね、ランクさん。あ、わたしを捕まえようとか思わないでください。ほかの皆さんが死にますよ?あなたの大事なシュナさんも…」

 「あぁ、捕まえる気なんかねぇよ。ぶち殺す…!」

 俺は、復讐心が高まり魔力が徐々に上昇して行く。安静室のベッドもガタガタと俺の高まる魔力に反応して音を立てる。

 「え、ちょ、ちょっとタンマ!!ストップですストップー!!」

 「タンマはなしだ。敵なら殺す!」

 俺がリリアルに殴りかかろうとした瞬間リリアルが叫ぶ。

 「からかってすみませんでした!あなたの実力が知りたくてわざと煽りました!!」

 俺は思わず拳を止める。

 どうやらリリアルの話によると、自分が拘束の力を受けてないのはカリオットから唯一命令を受けたからだという。

 「すみませんでした…私カリオットにあの時命令をされて、あなたを魔法で殺そうとしました。」

 「は?でもあの時全員倒れていたけど…」

 「ランクさん。あなたを殺そうとした瞬間、あなたが膨大な魔力を身に宿し立ち上がりました。その時にカリオットは緊急事態の対処のため、命令を解きました。それで、私だけは命令が終了し、拘束を受けてないのです。」

 リリアルの言ってることはどうやら本当の事のようだ。たしかに、あの時怒りのあまり周りを見ていなかったが、リリアルの位置が少しだけ変わっていたような気がする。

「私も、カリオットに主人を拘束状態にされました。だから、その復讐のためにあなたの実力を確認したかったのです。私は命令が解除された際、気を失ってしまったので、どうしてもあなたの実力を見たかったのです!」

 「そうか…とりあえず、すまなかった。事情も聞かないで殴りかかって。でもお前も悪いぞ!魔力を見してくれって言ってくれればいくらでも見せたのに。」

 「本当にすみませんでした!」

 そして、俺はリリアルを師匠の元へ連れていった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 「ほぉ、リリアルと言ったか?お主命令を解除されたのか…?」

 師匠はリリアルへ向けて疑いの目を向ける。

 「師匠大丈夫だ。こいつの目は嘘をついてない目をしていた。言っていることに嘘はない。」

 すると、リリアルは俺の言葉に続くようにコクコクと頷きながら「嘘はついてません!」の大きな声で言う。

 「まぁ、ランクくんが言うのなら間違いないのだろうな。じゃが、当分は事情聴取も兼ねて身柄はこちらで引き取らせてもらう。まだ命令されてるかもしれないしのう。それも確認させてもらう。」

 「分かりました。それで構いません。」

 リリアルはそう言って師匠へお辞儀をすると、次に俺の方へ向いて、「ありがとうございまた。次に会う時はお礼をしますね!」と言って、俺の方にもお辞儀をしてきた。

 その後、リリアルは城の兵士たちに連行されて行った。まぁ、疑いは晴れてるようだし不当な扱いはないだろう。しかし、クロムのやつを慕うやつもいたんだな…

 「あ、そうだ。師匠!組合長のラルフ=ストロノーフって人に合わせてくれないか?今は洗脳を解かれて現場復帰していると聞いたんだが…」

 「会えるぞ?なるほどのぉ。お主の知りたかったこととはそれか…よし、修行開始の時間まではまだ時間がある。彼は組合のギルド本部の立て直しをしているはずじゃ。」

 そして俺は、「分かった!ありがとう!」と言って、その場を後にした。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ここは、広場。試験が行われていた場所だ。ラルフ=ストロノーフはそこで職員と復興員たちへ指示を送っていた。

 そして、俺は近くの職員に名前を教え、面会をと伝えてくれと頼んだ。

 すると職員は「アインメルト…分かった。着いてこい」と言うので、ラルフの元へとついていく。

 「ラルフ様。面会したいと言っているものがいるのですが…」

 「今は忙しい。後にしてくれ。」

 「いえ、それが“アインメルト”の姓を名乗るものでして…」

 すると、ラルフは俺の姓を聞いたからなのかこちらを向き俺の肩を掴み俺の事を凝視する。

 「君がランクくんか!会いたかった。この度はすまなかった。私の落ち度だ。」

 「いや、気にしてない。あれは魔族が悪いからな。それに今回はその話じゃなくて、“4人の英雄”についてなんだ。」

 「なるほど。わかった、私の知る限りのことは話すこととしよう…」

 そして、俺はラルフとともに盗み聞きなどをされない場所へと移動する。

 「ラルフさん。今回の事件の主犯が、『呪術皇(カースエンペラー)』のカリオットということは知ってるよな?」

 「あぁ、存じているぞ。」

 俺は、単刀直入に話を切り出す。

 「やつは、俺の両親を含めた4人のパーティが幹部を倒し、その後報復として俺の両親はカリオットの手で殺された。そう語っていた」

 「その通りだ。“4人の英雄”とは、私と君の両親。そして、君の幼馴染のシュナ=リーリルの父親、グリル=リーリルの4人のことだ。」

 ラルフは全てを認め、その時のことを語り始める。

 「第5位の幹部『未現物体(ストレンジゴーレム)』を倒したのだが、その後カリオットに報復を受けた。その時君の両親は私たちを逃がすために時間稼ぎをして逃がしてくれた。要するに私とグリルは2人を見殺しにしてしまったのだ。」

 ラルフは俯きながら、俺に謝罪をするように事の全容を話してくれた。

 「ありがとう、ラルフさん。これでスッキリしたよ」

 「怒らないのかい?ランクくん。私は君殴られるつもりでここに来たんだ。その覚悟ならとっくの昔に出来ている。」

 「何言ってんの、ラルフさん!父と母が命張って守った人を俺が殴るわけないし、リーリルさんは俺の育ての親だ。そんな人たちを恨んだりはしない。俺は親のことを知りたかっただけだからさ」

 俺のこの気持ちに嘘はなかった。たしかに、両親が死んだのはすごい悲しかった。だが、オレにはシュナやリーリルさん。そして村の仲間。たくさんの人たちがいたから、ラルフさんやリーリルさんへの憎しみなどはない。

 そして、俺はラルフさんに一言「ありがとう!」と言って城へと歩き出すと、「また話そう!ランクくん!」と言って手を振ってくれた。

 《良かったのかい?ランク。まだ聞きたいことはあっただろ?》 

 (いや、それはまた今度。その話はリーリルさんに聞かなければいけない事なんだ。)

 俺はもうひとつあった質問を、またいつかラック村を訪れた時にリーリルさんにするためにあえて言わないでおいた。別にそれはリーリルさんを責めるためじゃない。俺はリーリルさんへ両親についてどう思ってるのかを話したかった。だから、あえてラルフさんには質問しなかった。それだけである。

  (あ、城へ戻る前に少し寄りたいとこがあるんだ。大丈夫か?竜王)

 《あぁ、問題ないよ。》

 そして、俺はシュナと苦労してあの日見つけたボロ宿へと向かった。

 ボロ宿を見た瞬間ポロッと声が自然と出てしまう。

 「たった数日前とかの出来事なのに随分懐かしく思えてしまうな…」

 俺は、ボロ宿のボロボロの部屋に入り、今回の目的のものを探す。シュナの写真立てだ。あいつは意外とホームシックになるとこがあって、俺とシュナとリーリルさんの3人で撮った写真を肌身離さず持っていた。

 「確か、試験の時は壊れたらやだって言ってここら辺に閉まってた気がするんだが…」

 俺はシュナのベットの近くにあった棚の中を探り、写真立てを取り出す。

 「懐かしいなこの写真…」

 目から自然と涙が零れ、ポツポツと写真立てに落ちる。

 「絶対…絶対呪いをとくからな。シュナ!」

 俺は心の中でなく、あえて口にした。自らに言い聞かせるように。

 ボロ宿のすきま風が肌と涙の痕にあたり、少し冷たい。だが、それはまるで俺の心を形容しているかのようでなぜだか親近感があった。そして、俺はその風を身に受けながら、自然と心の中で静かに意志を固めていた。